銀座八丁目「稲葉」で堪能する、温故知新の日本料理
銀座八丁目に店を構える「銀座 稲葉」は、開業して1年半ほどの新鋭ながら、堂々とした佇まいと高級感あふれる空間で接待や記念日にもふさわしい一軒である。温かい出迎えを受け、磨き抜かれたカウンターに腰を下ろすと、非日常の世界が始まった。

料理とお酒の流れ
最初の一杯はクラフトビール「伊勢角屋麦酒 ペールエール」。香り豊かでコクのある味わいが、序盤を華やかに彩る。先付は「松葉ガニのカニ味噌和え」。柚子皮の器で提供され、蟹の旨味と柚子の爽やかな香りが絶妙に調和していた。続くお凌ぎは蕎麦の上に鶉の卵のポーチドエッグをのせ、仕上げにトリュフをたっぷりと削りかける贅沢な一品。ここでお酒はソムリエに任せ、「ドラゴンインパクト」など個性ある銘柄が供され、グラスのセンスも印象的であった。

氷見の寒ブリは程よい食感と奥行きのある旨味をポン酢で楽しむ。スペイン白ワイン「Cies」を合わせ、金目鯛の藁焼きは香ばしさとねっとりとした食感をマルドン塩が引き立てた。煮物は「ブリ大根」。荒々しさのない上質な旨味を含むブリと、出汁をまとった大根の調和に心底和食の良さを実感した。


季節感と遊び心ある逸品
ふぐ料理も印象的で、「南蛮焼き仕立て」では骨際の濃厚な旨味と肉厚の食感を堪能。さらに「白子の天ぷら」ではキャビアを添え、とろける白子のコクと塩味のバランスが素晴らしい。続く「フカヒレのうま煮」は白湯仕立てに伊勢海老や九条ネギ、新筍を合わせた贅沢な和風アレンジ。炭火焼きの和牛つくねは粗挽きで、ハンバーグのような食感と卵黄の濃厚な旨味が絡み合う絶妙な一品だった。

食事と甘味で締め
食事は「本マグロ丼」と「牡蠣蕎麦」。おくどさんで炊き上げたご飯の旨さが際立ち、牡蠣蕎麦はサムライ・オイスターの濃厚な出汁で、最後まで飲み干すほどの美味しさ。デザートはお汁粉とあまおう、さらに山椒を効かせたガトーショコラと抹茶という和洋折衷の締めが待っていた。

最後に供されたのは沖縄ウィスキー「奏砂」。芳醇な香りと滑らかな余韻に魅了され、思わずお代わりしてしまった。
総評
「銀座 稲葉」は、伝統を守りながらも現代的な感性を取り入れた会席料理を提供する一軒。松葉ガニや寒ブリといった旬の食材から、トリュフやキャビアを組み合わせた創作性のある皿まで、幅広い表現で食通を楽しませてくれる。酒のラインナップも豊富で、ペアリングの妙を堪能できる。銀座で和食を求めるなら、記憶に残る時間を過ごせる一店として強く推薦できる。
訪問日:2023/01/18
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