銀座一丁目のいぶし銀すし屋で贅沢なひととき

寿司

銀座一丁目の隠れ家「すし屋の勘兵衛」で江戸前寿司を堪能

銀座一丁目に店を構える「すし屋の勘兵衛」。華やかな寿司激戦区にあって、派手さではなく実直な仕事と季節感を重んじる姿勢で、多くの寿司通から支持されている。今回で三度目の訪問だが、毎回新しい発見があり、改めてその魅力を記したい。

すし屋の勘兵衛の外観

つまみから始まる流れ

勘兵衛のスタイルは、まず酒肴で気持ちを高め、後半に握りで締めるというもの。靴を脱いでゆったりと座れるカウンターに腰を下ろし、生ビールと共にガリときびなごの酢漬けで口を整える。続く本鮪は脂の乗りとろける旨味、金目鯛は寝かせによるねっとりした食感と甘味が光る。さらにアカガイが登場すると、ヒモの食感と共に磯の香りが一気に広がり、ここで日本酒に切り替える流れが自然に生まれる。

すし屋の勘兵衛の本日のタネ
すし屋の勘兵衛キンメダイと赤貝

酒肴の妙技

中でも印象的だったのは北海道産あん肝。鯛塩と合わせることで濃厚さがより引き立ち、日本酒との相性が抜群だ。タイラガイの磯辺焼きは香ばしさと旨味が融合し、鰯のアルミ焼きはスペシャリテとしての存在感を放つ。梅水晶の酸味が酢飯に調和し、独自の美味しさを生んでいた。季節感あふれる新筍や、絶妙な火入れによるゲソ詰めなど、ひと手間かけたつまみは食べ手の期待を高め続ける。

すし屋の勘兵衛のスペシャリテ、鰯のアルミ焼き

握りで体感する職人技

握りに移ると、その技量が一層際立つ。アオリイカの透明感ある甘味、赤身漬けの深い旨味、春子鯛に効かせた海老おぼろなど、どれも一貫ごとに工夫が凝らされている。さよりは上質な身が淡白ながら余韻を残し、初物のトリ貝は力強い食感と香りを堪能。アワビは貝柱と本体を別々に仕立て、食感の妙を楽しませてくれる。小鰭の締め加減は絶妙で、のどぐろ昆布締めの脂の広がり、濃厚な雲丹の旨味と続き、圧巻の流れであった。

すし屋の勘兵衛のアオリイカ
すし屋の勘兵衛のサヨリ
すし屋の勘兵衛のトリガイ

余韻と特別な一皿

締めにはレモネードレモンの甘味が意外性をもって口をさっぱりと整える。過去には見島牛の炙り握りや、本マグロの目玉といった希少な一皿も経験しており、訪れるたびに新しい楽しみがある。伝統的な江戸前寿司の技と、季節や素材の個性を融合させた勘兵衛の世界は、銀座の中でも確かな存在感を放っている。

すし屋の勘兵衛

総評

「すし屋の勘兵衛」は、華美さを排した落ち着いた雰囲気と、江戸前の伝統を守りつつも工夫を凝らした酒肴・握りの数々で、寿司の奥深さを実感させてくれる一軒である。派手な演出はないが、じっくりと味わうほどに良さが伝わり、何度でも足を運びたくなる。寿司通にこそ薦めたい、銀座のいぶし銀である。

★鮨屋の投稿一覧

訪問日:2023/03/04

コメント

タイトルとURLをコピーしました