1. 制度の目的と位置づけ
ものづくり補助金とIT導入補助金は、中小企業が生産性を向上させるための設備投資やデジタル化投資を支援する制度である。前者は革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善を目的に機械装置やシステム構築への投資を支援する。一方、後者はソフトウェアやクラウドサービスの導入費用を補助し、業務効率化とデジタル化を促進する。自社の課題や成長戦略に応じて両制度を使い分けるとよい。
2. ものづくり補助金の概要
2.1 制度の枠組みと補助率
2025年度のものづくり補助金は、事業規模や目的に応じて複数の枠が設けられている。代表的な「製品・サービス高付加価値化枠」では、中小企業は補助率1/2、小規模事業者は2/3。補助上限額は従業員数によって変わり、750万円から2,500万円まで設定されている。海外展開を含む「グローバル枠」では上限が3,000万円に引き上げられ、通訳・翻訳費や海外市場開拓費も対象になる。賃上げ要件を満たせば、上限額をさらに増額できる特例もある。
2.2 補助対象経費と条件
単価50万円以上の機械装置・システム導入が必須条件となっており、それ以外の経費には上限額が設定されている。対象経費は、外部技術導入費、専門家費用、運搬費、クラウドサービス利用料、原材料費、外注費、知的財産権取得費用など。パソコンやスマートフォン、人件費、飲食費などは対象外である。
2.3 公募スケジュールと申請準備
2025年度は複数回公募され、春〜夏、秋〜冬と続く。公募から採択発表まで約3〜4か月を要するため、早めの準備が重要だ。申請は電子申請で行い、GビズIDプライムの取得が必要。事業計画書、決算書、見積書などは申請受付前に揃えておく。
2.4 採択率向上のポイント
- 革新性と市場性を明確に示す。
- 投資による効果を数値で裏付ける。
- 他社との差別化要因を強調する。
- 加点項目(経営革新計画承認、パートナーシップ構築宣言など)を事前に取得する。
- 補助金申請に精通した専門家の支援を受け、書類の整合性を高める。
3. IT導入補助金の概要
3.1 通常枠
業務効率化や生産性向上に資するITツール導入を支援。補助率は原則1/2で、最低賃金付近の従業員が一定割合以上の場合は2/3まで引き上げられる。補助額は導入するプロセス数により異なり、1プロセス以上で5万〜150万円、4プロセス以上で150万〜450万円。対象経費にはソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入コンサルティング、マニュアル作成、研修費などが含まれる。
3.2 インボイス枠
インボイス制度に対応した会計・受発注・決済機能などの導入を支援。ソフトウェアは中小企業で最大3/4、小規模事業者で最大4/5の補助率が適用され、上限は350万円。PCやハードウェアは補助率1/2、10万〜20万円まで補助対象となる。
3.3 セキュリティ対策推進枠
登録済みのセキュリティサービス導入を支援。補助率は小規模事業者で2/3、中小企業で1/2。補助額は5万〜150万円。
3.4 複数社連携IT導入枠
複数企業が連携してITツールを導入し、サプライチェーン全体の効率化を図る枠。補助上限は3,000万円と高く、補助率も通常枠より高めに設定されている。
3.5 申請フローと留意点
申請にはgBizIDプライムの取得と「SECURITY ACTION」の自己宣言が必要。登録ITベンダーと連携してツール選定から申請まで進める。導入後は実績報告と効果検証が必須で、補助金は事務局の承認後に入金される。
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