曙橋の隠れ家「敦煌」——職人技で仕上げる優しい中華の世界
曙橋にひっそりと佇む中華料理店「敦煌」は、いまや予約が数カ月先まで埋まる人気の名店。今回訪れたのは2018年7月、予約は約9か月前に確保したという期待の高さを物語る。カウンター8席と奥の円卓のみという小さな空間ながら、その料理は大きな存在感を放つ。コースはお任せ5,500円のみ。良心的な価格ながら内容は充実している。

前菜と酒の導入
食事の始まりは「キュウリとクラゲのサラダ」。サイズの揃った具材は食べやすく、さっぱりとした風味が口を整える。続く「イワシつみれのパン添え」は厚みがあり旨味が凝縮、塩を振ればさらに味わいが際立つ。ズッキーニの中華風炒めは軽快な辛味と食感が印象的だった。

お酒はハートランドや青島ビールに加え、紹興酒も用意されている。紹興酒は高級品ではないが、料理と合わせるとバランスよく寄り添ってくれる。
温菜と点心の妙
「鶏とレタスとパクチー炒め」は、鶏肉の旨味、レタスの食感、ラー油の辛味、パクチーの香りが絶妙に交わる完成度の高い一皿。続いて登場する「水餃子」は小ぶりでつまみやすく、厚めの皮はもっちりとした食感。魚醤系のタレも良いが、タレなしでも淡い旨味を楽しめた。

スープとメインの温もり
「スペアリブのにんにく梅干しスープ」は必食。希望すれば白飯を添えて、このスープをかければ格別の美味しさに変わる。さらに「冬瓜と卵白のスープ」は胡椒が効いた滋味深い味わいで、体に染み渡る優しさを感じる。

「担々麺」は四川風の刺激を和らげた独自の“敦煌風”。優しい味わいの中にじわじわと辛味が広がり、締めにふさわしい存在感を放つ。

甘味と余韻
デザートは「亀ゼリー」。ほのかな甘みが付されており、好みによっては蜂蜜を加えて調整できる。滋養強壮を思わせる余韻で食事を締めくくるのも、この店ならではの趣。
総評
「敦煌」は優しい味わいを基調に、中華料理の奥深さを再構築する希少な一軒。体に染み入る料理はどこか懐かしく、それでいて洗練されている。予約困難ではあるが、一度は体験してほしい珠玉のコースである。
訪問日:2018/07/25
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