■ 総評
広島・白島の「季節料理 なかしま」は、和食の美しさと器へのこだわり、そして大将の人柄が存分に味わえる名店。全てが上質でありながら、肩肘張らずに楽しめる空気感。予約困難になるのも納得のクオリティで、地元食材と職人技が織りなす一皿一皿に感動を覚えた。
■ 店舗・雰囲気
白島駅からほど近く、静かな住宅街に佇む。
10年の歴史を感じさせつつ、1年半前に改装された清潔で落ち着いた和空間。
カウンター8席とテーブル4席。
器や調度品にも強いこだわりを持ち、料理と器のマリアージュが徹底されている。

■ 料理・ドリンク
【ドリンク】
最初は生ビール(ブラウンマイスター)で乾杯。
日本酒は「雨後の月 純米吟醸スペシャル」。木をくり抜いた薄手のお猪口で、飲み心地抜群。
【前菜】
広島産めねぎ・北海道産ホタテ・春野菜のジュレ
ホタテは軽く炙られ食感良し、爽やかな酸味とジュレで春を感じさせる。器は奇抜な京焼。
【造里】
いかのウニ巻き
隠し包丁が美しく入り、イカとウニの相乗効果が絶品。
周防大島産真鯛は一日ほど熟成し、甘味と食感が抜群。
山口産よこわは本マグロより好きかもしれない。きめ細かい身質で旨味しっかり。
添えられる山芋のざく切りや食用花も美しく、
人間国宝・井上萬二作の白磁の器に盛られて、食後に現れる模様までも計算された美意識。

【お出汁】
カツオと昆布の一番出汁。
金目鯛や原木しいたけなどが入り、100年物の輪島塗椀で提供。
柚子の香りが立ち、身体に沁みわたる。

【焼物】
三枚下ろしの瀬戸内産太刀魚を、塩と一味で半日陰干し。
旨味、脂、食感ともに過去最高レベル。
箸休めは山形の乃し梅とトマトホオズキ。

【蒸物・煮物】
ふぐ白子の茶碗蒸しは、ポン酢・もみじおろし・ネギと共に。
熱々で白子の濃厚さとポン酢の相性が抜群。
桜鯛の桜蒸しは道明寺粉で包み、出汁・桜の香り・銀あんの三重奏。
350年前の古伊万里の器で供される。

【食事】
あいがも農法による完全無農薬米を土鍋で炊く。
ちりめんじゃこやお新香と共にいただき、
何杯でも飽きがこない。お代わり必至。

【甘味】
酒粕プリンは驚くほどの弾力と深い甘み。
酒粕の旨味がしっかり感じられ、他では味わえない余韻が残る。
■ まとめ
冬と春の境目を感じる旬の食材に加え、350年~100年級の器と現代の名工の作品が交錯。
料理だけでなく、器やお猪口、空間のすべてに「和食の美」と「おもてなしの心」が詰まっている。
何度でも訪れたくなる、広島を代表する芸術的な日本料理店だ。
訪問日:2017/03/07
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