■ 総評
人形町の「川田」は、店主の思いやりが一皿ごとに感じられる、静かで上質な和食店。奇をてらわず、食材の持ち味を引き出す仕事は丁寧そのもの。目立ちすぎない絶妙なタイミングで、手間を惜しまぬおまかせ料理が供される。予約困難な名店が多い中、こうした等身大で実直な店こそ本当に再訪したくなる。
■ 店舗・雰囲気
カウンター8席ほどの小さな新店。内装はまだ未完成の部分もあったが、逆にこれからの成長が楽しみな印象。店主の柔らかい接客と静かな空間で、肩ひじ張らずに過ごせる。丁寧な所作が随所に感じられるのも好印象。

■ 料理・ドリンク
生ウニと鯛出汁の煮こごりは、やさしく自然な旨味が広がる一皿。海鼠腸の飯むしや、ハモ浮き袋・ゴボウなど珍しい食材も絶妙な火入れ。
ずいきの吉野煮、いちじくの冷たい田楽は、京都仕込みの優しい味付け。
天ぷらは、とうもろこし・新銀杏・ハモ煎餅。揚げたての追いとうもろこしも。

アスパラ、太刀魚の揚げ物はサクッと軽く、中はふんわり。香りと旨味のコントラストが素晴らしい。
蓴菜にわさびをのせてお口直し。白子茶碗蒸しは熱々とろとろ、出汁が効いていて心がほぐれる。

お造りはタイとマグロ。適度な弾力と脂のりで、シンプルな旨味を楽しめた。
冬瓜とハモ・松茸の椀は、出汁のインパクトも強く、香り高い。

稚鮎は焼きたてを2尾。ふんわり柔らかい身としっとり感が魅力。

鱧ソーメンは、爽やかなスープと独特な麺の食感が楽しい。
炊きものの鰊なすは、とろける茄子と山椒がアクセント。
漬け物は茄子・きゅうりで素材感をしっかり感じる。
ご飯ものは、新生姜ご飯・タイとゴマだれのご飯・ちりめん山椒・生海苔佃煮ご飯の4種。どれも炊き加減が絶妙で、特に生海苔の佃煮ご飯が印象的。

最後はわらび餅。甘味もきちんとした仕事で、最後まで満足度が高い。
■ まとめ
気取らず優しさのある、まさに“思いやりの時間差口撃”が心に残る和食体験。料理はどれも誠実な仕上がりで、食材のよさと季節感を大切にしている。予約困難になる前に、また必ず再訪したい良店。
訪問日:2019/08/05
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