■ 総評
西麻布のフレンチ「AZUR et MASA UEKI」を初訪問。食材・技術・ストーリー性の全てにこだわり抜く、今の東京を象徴する現代フレンチだ。料理ごとのテーマや素材の活かし方、食べる体験そのものがドラマチックに設計されており、一皿ごとに驚きと感動が連続する。コース進行やペアリングの構成も緻密。何度でも新しい発見がある、唯一無二の体験となる。
■ 店舗・雰囲気
外観も店内も洗練されており、シンプルな中に温もりを感じるモダン空間。カウンターからテーブル席まで開放感があり、スタッフとの距離感も絶妙。平日ランチでも特別感が味わえる。ナイフや器など細部へのこだわりも素晴らしく、五感すべてでフレンチを楽しめる設え。


■ 料理・ドリンク
コースは全8皿、平日限定のワインペアリング付き。
・はんなりExpectation
白子をガストロバックで仕上げ、岩もずくとシャドークイーンを合わせた前菜。とろける白子に磯の香りとジャガイモのコクが重なり、春の息吹を感じる一皿。

・甘美なる憂愁
スペシャリテのフォアグラ・海老・カカオ。オレンジと海老のソースが一体となり、甘味・旨味・酸味が複雑に絡む。海老の頭はプレスしてスナックのように。
・北の国から
蝦夷鮑・聖護院蕪・キャビアをラビオリ仕立てで。鮑の柔らかさと蕪の甘み、キャビアの塩気が絶妙に調和。

・里山からの贈り物
シャンピニオン・軟水・能登塩のみで作るスープは驚くほどの旨味と香り。食べられるマッシュルームに、進化系フレンチの真骨頂を感じる。
・荒波を乗り越えて
旬の鮮魚(この日はフグ)、加能ガニ、菜の花、イカ墨のガレットなど。彩り・火入れ・ソースのバランスも秀逸。

・大地に思いを馳せて
能登ハーブや花、ピスタチオで構成。自然の力強さと美しさを感じる繊細な一皿。
・情熱の赴くままに
野鴨を日本刀職人のナイフで。クワイや牛蒡の香りとともに、濃厚なソースで赤ワインとの相性抜群。
・灯照らす

林檎と木戸泉純米酒、アップルパイを再構築したデザートでコースの余韻を締めくくる。
・自家製全粒粉ミルクパン、ボルディエバターも秀逸。パンのお代わり必須。

ペアリングはアズールロゼ、クイビラ(ソーヴィニョンブラン)、南オーストラリアのピノ・ノワールなど。料理との相性も抜群。
■ まとめ
AZUR et MASA UEKIは、ひと皿ごとにドラマを感じる現代フレンチ。素材の個性・技術・世界観が高い次元で融合し、東京で“今食べるべきフレンチ”と断言できる。料理好き・ワイン好き・美食家の誰もが満足する完成度。次はディナーコースでじっくり味わいたい。
訪問日:2021/02/17
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