現代の錬金術師~唯一無二のイノベーティブ「CHIUnE」体験記~

尾長鴨炭火焼 イノベーティブ

■ 総評
銀座の片隅にひっそり佇むイノベーティブ・フレンチ「CHIUnE」。一日わずか6席という超プライベートな空間で、料理人の知性と感性が極まる唯一無二のガストロノミー体験が待っている。食材、火入れ、調理技法、構成すべてに驚きとストーリー性が凝縮されており、訪れる者に“現代の錬金術師”と呼ぶに相応しい衝撃を与える。

■ 店舗・雰囲気
ビルの一角にある小さな扉を開くと、凛と静まり返る6席のカウンター。
照明は控えめ、調理音がBGMとなる静寂の中で、シェフの動きと料理だけが主役として浮かび上がる。
ゲストと料理人の距離が近く、ほとんど全ての皿が手渡しで提供されるのも臨場感を高めている。写真撮影は一部のみ許可、余計な情報や演出が排除された空間は、食への集中力を極限まで高めてくれる。

尾長鴨炭火焼

■ 料理・ドリンク

スタートは白子のムニエル
表面はカリッと香ばしく、中はとろけるような滑らかさ。旨味が濃縮されており、一口目から“只者ではない”という予感を抱かせる。

白イカとビーフンは、繊細な火入れと絶妙な歯ごたえ、
なぜこんなに旨いのか、食べるほどに疑問が深まる。ビーフンに移るソースのコクとイカの甘味、食感のコントラストが秀逸。

ボタン海老のオムレツは、オムレツの滑らかな食感と海老の旨味が一体となり、シンプルな構成で素材の良さが際立つ。
続くノドグロは、崩して食べるスタイル。脂を重たく感じさせず、温度管理が徹底されており、外側と内側で火入れのニュアンスが異なる職人技。

原木椎茸と卵黄は、素材の旨味の掛け算で生まれる不思議な調和。
卵黄のコクと椎茸の風味が合わさり、シンプルながら奥行きのある一皿に仕上がる。

ハイライトの一つがアルバ産白トリュフのコンソメ
蓋を開けた瞬間、空間を支配するほどのトリュフの芳香。
エキスが凝縮されたスープは感動的な奥深さで、唯一無二の贅沢さ。

尾長鴨の炭火焼きは、力強い赤身と皮目の香ばしさが印象的。
10年熟成の赤酢とナメコの特製ソースが肉の個性を見事に引き立てる。

尾長鴨炭火焼

伊豆天城黒豚のローストは、しっとりジューシーな肉質と旨味が凝縮されたタレ。
思わずご飯が欲しくなるほど、濃厚かつ上品な味わい。

間人蟹のおじやは、龍の瞳という粒の大きい米を使用。
蟹の旨味が染み込み、シメとしてだけでなく、主役級の存在感。

デザートの牛乳と卵の紹興酒アイスクリームは、滑らかでコク深く、口当たりの良さに紹興酒の香りがアクセントとして効いている。

ワインペアリングは(今回はハーフ)、1970年ヴィンテージのワインなども登場し、非日常感を演出。ただしペアリングの組み合わせは「完璧」というほどではないが、食体験としての総合力は圧巻。

■ まとめ
「CHIUnE」は、料理の驚きと完成度、五感を刺激する体験型のガストロノミーとして銀座屈指の存在。超予約困難かつ価格も高額だが、それだけの価値と唯一無二の記憶を与えてくれる一軒。食材の生命と職人技が昇華した瞬間を堪能したいなら、一度は訪れるべき現代フレンチの最高峰だ。

訪問日:2018/11/21

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