■ 総評
「中国四川酒家 蔓山」は、幕張本郷エリアで真の四川料理の神髄を味わえる名店だ。伝統的な四川の香りと現代的な技術が融合し、すべての料理が芸術作品のような存在感を放つ。料理長の研ぎ澄まされたセンスと、素材・技法への執念が、一品ごとに確かな美味しさと驚きとなって現れる。
■ 店舗・雰囲気
店内は落ち着いた照明でまとめられ、四川伝統の意匠とモダンな空間デザインが心地良く調和している。外観や内装自体はシンプルだが、そこに集う料理人の気迫と、細部にまで気配りの行き届いたサービスが、食事体験全体の格を高めている。席数は少なめで、特別な会や貸切にも対応している。

■ 料理・ドリンク
この日のコースは、まさに「職人技の結晶」と呼ぶにふさわしい内容だった。小鰭の花椒風味は、花椒の痺れと魚の淡白な旨味が鮮烈に調和。真魚鰹の炙りと真蛸の麻辣サラダは、辛味と繊細さが交錯する唯一無二の一皿。似鯨と行者ニンニクの紅油ソースは、パンチの効いた旨味で食欲を刺激する。

名古屋コーチンの棒棒鶏は肉質・火入れ・胡麻ソースの三位一体。赤ムツと茸の蒸しスープは、素材の旨味が全て抽出され、余韻の残る美味しさ。

干し海鼠と香茸の醤油煮は、食感・香りともに他では味わえない存在感だった。

さらに、白海老と甘鯛の鱗を鉄観音茶で炒めるなど和中融合の遊び心も光る。鮑や蕗の薹の肝炒め、仙台牛と春筍の甘酢唐辛子炒め、伝統の陳麻婆豆腐まで、全皿で素材選びと火入れ、味付けの完成度が突出していた。
ドリンクもワイン・中国茶・紹興酒など料理の個性に合わせて楽しめるラインナップ。杏仁は爽やかな締めで、全体をすっきりとまとめてくれる。

■ まとめ
四川伝統の重厚さと現代中華のクリエイティビティが高次元で融合し、唯一無二の体験を提供する「蔓山」。ひと皿ごとに料理人の哲学と技術が凝縮されており、細部まで妥協のない味わい。食べる者の感性を揺さぶり、何度でも訪れたくなる中華の新境地だ。中華好きも、食通も必訪。
訪問日:2025/03/09
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