■ 総評
常陸大宮市の「雪村庵」は、日本家屋のしつらえの中で茨城の旬食材とバスクのエッセンスが融合した特別なランチ体験を届けてくれる一軒。美しい盛り付け、驚きと納得の連続の味、そして最後までワクワクさせてくれるストーリー性――どの皿も、わざわざ足を運ぶ価値を感じさせる完成度だ。
■ 店舗・雰囲気
古民家を活かした和の趣があり、窓からは自然光が柔らかく差し込む。
日本家屋の設えにフレンチ×バスクの料理が溶け込む不思議な一体感。
丁寧なサービスでリラックスでき、料理への説明も熱量が高く、特別な時間をゆっくり楽しめる。


■ 料理・ドリンク
最初に供される自家製ノンアル「炎~ミステリアス~」はいちご酢とベリーが重なり、複雑な味わい。
アミューズ3種はバスクの風景を表現。ヤシオマスのマリネとゼラニウム、フォアグラキャラメルのビーツ風味、サツマイモのタルトなど見た目も鮮やか。

パンはナツハゼ果汁を加えた自家製。しっとり香り高く、スペイン産オリーブと共に。
オードブルの主役は久慈川の天然釣り鮎。華やかな盛り付けで、ほろ苦さとソースのコクが鮮烈。

ズッキーニのビルバオ風ムースには、いぺりこぶたソーセージやジャガイモのピューレ。花々の香りも豊か。
花かごに入ったドルチェドリームとうもろこしのアイスは、シャキシャキとした食感と甘味が印象的。
岩牡蠣はそのまま&パッションフルーツソースの2スタイル。タピオカや食用花・ハーブも美しく、旨味と酸味が絡む。

ピペラードはバスク風の夏野菜煮込み。三種のジャガイモチップ、生ハムと卵黄で構成。
神経締めヒラメはしじみ&コーヒーのソース、星型キュウリの付け合わせ。外パリ中フワで技が光る。
ピノガールという希少スイカはココナッツでコーティングされ、花と一緒に夏を感じる味。
メインはじっくり火入れした梅山豚。茨城産オクラとナスも絶妙なバランス。

デザートは固い桃(あかつき・紅錦香)のコンポート。桃と紫蘇のジュレシートで包むスペイン的発想。
ラ・ビーニャ仕込みの本格バスクチーズケーキは要予約でテイクアウト可。
締めの小菓子は“シェフが拾ってきた木”にハニカム型焼き菓子やトゥロン、カヌレなどを盛り合わせ。

■ まとめ
食材の組み合わせや盛り付けは奇抜なのに、味わいは一皿ごとに必ず納得のいく完成度。
茨城の自然とバスク料理が高い次元で融合し、土地の力を感じる体験となった。
季節を変えて何度も通いたくなる、唯一無二の地方フレンチだ。
訪問日:2022/08/13
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