京都の技を現代的に再構築した高コスパ懐石

日本料理

富ヶ谷で出会う「京料理 阿うん」——京都の技と独創性を兼ね備えた一軒

代々木公園・富ヶ谷に佇む「阿うん」は、京料理をベースに洗練された懐石を提供する隠れ家のような存在。1万円のコースを中心に、肩ひじ張らずスマートカジュアルで楽しめる雰囲気ながら、その料理の完成度は都内有名店を凌駕するほどだ。

京料理 阿うんの外観

前菜と序盤の展開

最初に選んだドリンクはストーンのインディアン・ペールエール。メニュー表裏には日本酒やワインも豊富に揃っており、ペアリングの選択肢も広い。最初の皿は「里芋の湯葉あんかけ」。柔らかく煮含めた里芋に京料理らしい湯葉が寄り添い、滋味深い温もりを伝える。

京料理 阿うん、里芋の湯葉あんかけ

続いて登場したのは「金目鯛の刺身 山葵ジュレがけ」。爽やかで香り高い山葵ジュレがねっとりした身を引き立て、上質な旨味を鮮やかに表現する一皿。丁寧な仕事ぶりが随所に感じられ、この後への期待を一層高めてくれる。

京料理 阿うん,キンメダイの刺身

椀物と寿司の個性

「鰆のお椀」は、柚子皮の香りと上品な出汁の調和が素晴らしい。昆布出汁と淡白な鰆の旨味がじんわりと広がる、典雅な一杯。続いて供されたのは「マグロの寿司 黄身醤油」。漬けと大トロの二貫は、寿司屋とは異なる独自のシャリの設計が光り、爽やかな余韻が春を思わせる。寿司を京料理として昇華させるセンスに驚かされる。

鮪
京料理 阿うん、鯖のお椀

焼物と酒肴の妙

「ヒラスズキの南蛮焼き」は芳ばしい葱の香りをまとい、和風グリルのような趣。添えられた丹波の黒豆の質も高く、来年の正月料理をここで頼みたくなるほど。さらに「〆鯖と紅白なます」は胡麻とイクラを添え、奥ゆかしい味わいで締める。輸入鯖ではなく上質な天然物を選ぶ点に料理人の哲学を感じる。

京料理 阿うん、ヒラスズキの南蛮焼き

ここで日本酒は「龍力」「一本義」と続き、後半に「雁木 純米無濾過生原酒」が登場。大将お気に入りの一本で、料理との相性も抜群だった。

メインと食事、甘味

「聖護院大根と穴子の白焼き 西京味噌仕立て」は、柚子皮の香りを効かせた完成度の高い一品。京都に行かずとも本格的な京料理が味わえると実感させられる。

聖護院大根と穴子の白焼き 西京味噌仕立て

食事は「鯛めし」。土鍋から立ち昇る香りとともに、ふっくらと上品に炊き上げられたご飯が供される。赤出汁とともに頂けば、最後まで品格ある締めとなる。

京料理 阿うんの鯛飯

甘味は「抹茶プリン」。とろける食感と抹茶の芳香、見た目の美しさを兼ね備えた逸品で、これだけでも訪れる価値があるほどだった。

総評

「阿うん」は、1万円という価格帯でありながら、京料理の伝統と現代的なセンスを兼ね備えた完成度の高いコースを楽しませてくれる秀逸な店。富ヶ谷という立地で、これほどコストパフォーマンスに優れた日本料理に出会えるのは稀有であり、通好みの一軒として記憶に残る。

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訪問日:2023/01/24

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